これは実感だ。
色々な理由があるだろうが、日本には留学を推進するシステムが整っていないという理由もあるだろう。留学の道を自分で開拓しようという学生でなければ、かなり無理がある。私が学部生のときに留学したときよりもだいぶ制度は変わっているだろうが、それでも学生が外へ出て行かないということは、システムの問題があるのではないだろうか。
約10年前にパデュー大学に留学したときのこと。私の母校は国立の農業大学で、その学生の大半が地方出身者で、留学を口にする学生は皆無だった。私は入学初日に、教務係と教務担当教授(留学科は存在していなかった)と話し、米国にある姉妹校と、存在する留学プログラム、留学の時間を確保するために卒論を書かずに卒業するにはどうすればいいのかを聞き出した。もちろん、彼らが知らないことの方が多かったが、概要はつかめた。3年前期(5学期)までに卒業単位を終わらせれば、卒論が免除されるということだったので、私の2年半の授業取得計画は決まった。あとは、その間にキャンパスライフを楽しみつつ、長期休暇に米国の語学学校に行って英語を磨く計画を立てるだけだった。前者は、簡単だ。消去法的に空いた時間に好きなだけ遊べば良い。後者は、お金の工面が必要なので、バイトを探した。大学まで、自宅から30分かけて自転車で通っていたので、その通り道もしくは自宅でできることとなる。結果、午前6時から8時まで、通学途中にあるファーストフード店で資材搬入の仕事を行い、それから午後6時まで授業を5コマすべてとり、放課後は家庭教師の仕事をした。長期休暇はそうやってためたお金で、ボストンやサンフランシスコの語学学校ですごして、留学の準備を進めた。今、思ってもタフな毎日だった。アメリカの大学に行くのだから、GPAをないがしろにはできない。つまり、オールAを狙う必要があったからだ。そこまで理想的には行かないのが現実だが、3.9程度はあった。この0.1が私のつめの甘さだ。
さぁ、留学するという段になって、今までに誰も留学制度を利用したことが無いということが明らかになった。国立の農業大学としては知らぬものがいない場所で、「未だかつて誰も...」というのはやはり衝撃ではあった。過去2年間、1ヶ月の体験交換留学という形で夏に数人を送り出していたが、長期は初めて。ふたを開けてみたら、そこに制度は存在しなかった。
無いなら作れば良い。
私は、留学の理由、なぜ私を留学させる価値があるのかを述べ、短期の枠のほとんどを自分に使って長期枠とするという提案をして、結果、制度を作り上げた。当初、米国のschool year8月から5月の留学しか許可が下りなかったが、計算のうちであった。留学して、案の定、英語は太刀打ちできずにいたが、授業は分からなくても試験で点数は取れる。私は、Honorといわれる成績優秀者の表彰を受け取り、日本の大学に手紙を書いた。そして、六月以降の夏学期と秋学期の終わりまで、計18ヶ月の米国大学への留学を、日本の国立大学への学費(当時年間約50万円)で成し遂げた
という、自慢話。
現在の学生に、ここまで何から何まで自分でする必要は無いだろう。ただ、自分のゴールを設定して、その達成のための階段を真摯に上り続ければ、大概のことは可能である。もしも、日本の学生が、その努力を惜しむ故に、様々な情報を得るだけで、実際に日本の外を見てみようと思わないのであれば、こう言いたい。
"I only know that I know nothing"
と。
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